収益認識会計基準の設定

 1. 概要

 2018(H30)330日に企業会計基準委員会(ASBJ)から(企業会計基準第29(収益認識会計基準)が公表されました。我が国での収益認識にかかる基準としては、企業会計原則の「売上高は実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る」のみが存在していましたが、収益認識会計基準によって包括的な基準が設定されたことになります。 

 収益認識会計基準は、国際会計基準審議会(IASB)および米国財務会計基準審議会(FASB)が共同開発した「顧客との契約から生じる収益」(IASBIFRS 15FASBTopic 606)との調和をはかっており、日本基準を高品質で国際的に整合性のとれたものにする方針に従っています。

 

2. 基本原則と処理手順

 財またはサービスの顧客への移転をそれとの交換に得る対価の額で収益を認識するのが基本原則です。

収益認識する処理手順は次の五段階となっています。

 ①顧客との契約の識別

 ②契約における履行義務の識別

 ③取引価格の算定

 ④取引価格の履行義務への配分

 ⑤履行義務の充足に応じた収益認識

  

3. 影響

 我が国の会計慣行と異なる項目についての配慮も織り込まれていますが、割賦基準に基づく収益計上、顧客に付与するポイントについての引当金処理、返品調整引当金の計上等については、収益認識会計基準で代替的な取扱いを設けていないため、今後の動向に注視する必要があります。

  

4. 適用対象および適用時期

 会計監査の対象となる法人が適用対象となり、そうでない企業は、従前通りの企業会計基準・中小企業会計指針・中小企業基本要領による会計処理が認められます。

 強制適用の時期は2021(H33)41日以後開始事業年度の期首からとなります。早期適用は、2018(H30)41日以後開始事業年度あるいは2018(H30)1231日以後終了事業年度からとなります。

  

5. 留意事項

 中小企業の多くは会計監査を受けていないため、自社において収益認識会計基準の適用を強制されることは少ないと思われます。しかし、得意先あるいは仕入先が上場会社であることは多々あり、相手企業がこの収益認識会計基準の適用を受けて、何らかの業務上の対応を求めてくることが生じるかもしれません。